よみがえる古代王朝 (古代の地平を拓く 3) 2019/5/31河村日下 (著)ミネルヴァ書房 なぜ、古墳がつくられたのか?

古代史に興味がある人なら書店や図書館で見かけたことがあるかもしれない。

最近、出た本の中でひときわ格調の高い装丁である。
全4巻。


 第Ⅱ部 消された古代王朝

第六章 邪馬壹国、その後
 1 徘徊する「妖怪」 2 「貴国」と「貴倭女王」 3 「石穴」は語る

第七章 実在した九州王朝
 1 鏡の中の九州王朝 2 鉄刀の中の九州王朝 3 「石上」は「イソノカミ」か

第八章 「倭の五王」を巡る謎
 1 『記紀』に姿を見せない「倭の五王」 2 「倭の五王」の都するところ

第九章 巨大古墳の謎を解く
 1 巨大古墳築造の目的 2 「前方後円墳」の名称は間違っている
 3 卑弥呼の鏡と三角縁神獣鏡  4 同笵鏡の語る真実


私は、本書第3巻を古本屋で買い求めた。
2年ほど前のことである。
それでも、2600円もした。
定価4000円というから驚いた。

今回これを書くに際してアマゾンで調べたら、第1巻の記紀神話の真実 (古代の地平を拓く)に至っては、6600円!!もする。
普通の装丁のごく普通の本である。
魂消た。
あまりに高価なので、他の3冊は図書館から借りてきた。

 

そんなことより内容である(笑)。

本の感想を言えば、私とおなじ古田武彦信奉者である。
ややこしいのが、九州王朝説を支持しながら、同時にまた著者の出身地である鳥取地方に古代王朝が存在していたとの説。
残念ながら、著者の説には乗れなかった。だが、古田武彦信奉者らしく、歴史の真実に迫っているところが各所にある。見事である。

私がとくに感銘を受けたのが、あくまで第3巻、そのおしまいの方の、30ページばかりである。

 

第九章 巨大古墳の謎を解く 1 巨大古墳築造の目的 

353ページ。 ここに一つの分布図がある。この分布図を、「全国未解放部落分布図」という。
製作者は、早稲田大学・部落問題研究会・文学班。年代は昭和11年となっている。

 

被差別部落の起源に関わって、無視することのできない特徴が、この分布状況である。

古田武彦は作家・住井すえとの対談で、この分布は古墳、それも前方後円墳の分布と一致していることを論じている。(住井すえ、古田武彦、山田宗睦「天皇陵の真相」)

 

近畿に存在する初期の古墳、たとえば和歌山県岩橋千塚(いわせせんづか)古墳群とか、岡山県にある群衆墓などは誰が見ても、一族類縁者が築いたものだ。だが、そのほかの古墳に関しては、私は大部分、墓ではなかったとの見方である。


362ページ。
異国、それも敵地に強制移転されて、報復のための直接的暴力のみならず、屈辱・見せしめなどの精神的苦痛を背負わされた人々以外に、強制移転された人々以外に、強制移転されなくとも、同じだけの虐待を受けた人びとはすくなくなかったと想像される。その悲惨な事実を、私たちに静かに告げていた構造物が、実は奈良・大阪に集中している巨大前方後円墳なのである。


「ピラミッドの目的は完成後の『用途』にあるのではなく、造るという『製作』そのものにあるのである」
                    
   ピラミッドの謎 (1976年) クルト・メンデルスゾーン (著), 酒井 伝六 (翻訳)


「あるいはかなりの地方に高地性集落があらわれる。
弥生中期。あらわれかたも1回ではないのです。
同じ集落をまた修復して使ったりしていますが、しかし古墳ができるようになるとそういうものはほとんどなくなっていく。
なくなるばかりか、ここがまたおもしろいのですが、かつての高地性集落のあったうえに、あるいはすぐ付近に、その地方でもっとも古い前方後円墳が突如として築かれる場合がある。いまのところこの謎はちょっと解けない。」

考古学者・森浩一「考古学の模索」1978 学生社


銅鐸民族の悲劇: 戦慄の古墳時代を読む 2010 臼田篤伸 (著) 彩流社
巨大古墳の出現と時を合わせて銅鐸文化は消滅した。
天孫族の九州から大和への侵出は“神武東征”に象徴された“民族戦争”であり、敗者である銅鐸民族は奴隷として強制労働に駆り立てられ、巨大古墳作りの労働力とされた 。巨大古墳群は被征服民族・銅鐸民族の奴隷労働の結果であり、そこは同時に古代日本版「収容所群島」だった。
古墳時代“消耗システム論”を立証した異色の書。

↑なぜ、古墳がつくられたのか? その謎の糸口にたどり着いたのは、考古学者・森浩一氏のみである。その他は、節穴、生きるに値しない…

 

 

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