日本人の起源 人類誕生から縄文・弥生へ (講談社学術文庫) 2019/中橋 孝博 (著)

【本書の内容】
第一章 太古の狩人たち――旧石器時代の日本列島人
第二章 人類の起源と進化
第三章 アジアへ、そして日本列島へ
第四章 日本人起源論――その論争史


このテーマ、いろいろ読んでるがこれが一番まとまってる印象。
2005年、初出だが最新の情報に書き換えは済んでるし、何より、「日本人の起源」通史として優れている。
朝鮮半島から渡来したはずの佐賀県の支石墓に残されていた骨を分析したら、縄文人だったという不思議(その後、5件、同様な支石墓も)も事実として書いている。

 

ただ、再読して見過ごせなかったのが、旧石器時代の日本列島人における、直良信夫相沢忠洋の「悲劇」である。
敢えて、悲劇と言おう。
相沢忠洋に関しては、作家・松本清張がよく取り上げて、自分の学歴のない境遇と引き比べて論じている。

 

1931年春、直良信夫は当時病気療養の身を妻に支えられながら、一人で毎日のように土器や化石を求めて周辺の遺跡巡りをしていた独学の考古学徒であった。
彼は明石の西八木海岸で、自然の礫にしては不自然な形をした石片をみつけた。
それは人骨、腰の骨であった。
さっそく直良はこの発見を東京大学に知らせ、追って人骨も送った。

 

人類学雑誌に載せるかという議論が始まった時点で、御大・鳥居龍蔵からストップがかかった。直良の発見には何の瑕疵もなく、ただ人類学雑誌の当事者による綱引き合戦であったらしい。
そんなこんなでうやむやになり、とうとう1945年の空襲で灰になってしまった。

 

1948年、なんと発見から17年後現地で行われた再発掘調査にも立ち会わせてもらえず、少し離れたところからその様子を見つめる直良信夫の姿があったという。しかも、浸食により発掘地が違っていて、それも離れたところから見ていた直良信夫の指摘によって変更されたのだという。

 

↑なんだか、部外者が今読んでもひどい話ではないだろうか?

 

「あなたたち、そんなに学校を出ていない人を差別したいの??」と率直に問いかけたくなる。

 

「人より、ほんの少し先を行くと、ほめそやしてくれますが、あまりにも先を走るとバカにされ、(中略)今にして思えば、私は少し早く走りすぎたようです……」
直良信夫は晩年、明石の「旧石器」についてこう呟いたという。


2023-06-12 土偶を読むを読む 2023/4/28 文学通信

人類学者・中沢新一 372ページ
「日本のなかでは、考古学が、茶道や華道のような家元制度とよく似た発展をしているなと思いますね。ひとつひとつの所作にものすごく重大な意味を持たせて分類されていくんだけども、それは閉じられた世界のなかだけで意味を持つことで…」

 

↑すごく共感する。現状の日本考古学に対する至言ではないか。


現にいま、邪馬台国畿内説という「家元制度」があるじゃんかよ、納税者に対してどう責任取ってくれんだよ。

 

森浩一「関東学をひらく」より 2001 朝日新聞
>これに対して、この数年間に調査のおこなわれてきた大和古墳群での中山大塚、下池山、黒塚などの前期古墳の埋葬は
いずれも木棺を壮大な竪穴式石室で囲みこんでいたし、若い日の僕が発掘に加わった櫛山古墳は石棺を竪穴式石室におさめていた。
今回発掘されたホケノ山古墳では、木棺の外側に木槨と石室との2重の外部施設を備えていて、倭人伝が記している倭人の葬法には合っていない。

 

魏志倭人伝」には、倭人の葬式は、 棺あって槨なし。」 と、明記しているのだ。
木槨のなかに木棺があったのでは、「魏志倭人伝」の記述に合っていない。<

 

三国志」の著者は、葬式、葬儀の形態に、非常に関心をもっていた。たとえば、

「韓伝」「夫余伝」では、それぞれ、「槨あって棺なし」、

高句麗伝」では、「石を積みて封となす」、

「東沃沮伝」では、「大木の槨を作る、長さ十余丈」などと、いちいち書きわけている。

畿内の「木槨木棺墓」も「竪穴式石室墓」も、「棺あって槨なし」にあわない。
邪馬台国が、かりに大和にあったとすれば、魏の使は、それらの葬式を見ききせずに記したのであろうか。

 

不思議なのは、マスゴミにも放置されている魏志倭人伝のこういう記述を完全無視する邪馬台国畿内説派のふざけた態度である。
読めないのではなく、都合が悪いから、敢えて読まない、無視するのであろうが、そういう邪馬台国畿内説派の態度はますます科学からかけ離れて危険極まりないと思う。

邪馬台国畿内説 → 家元制度 たる所以である。

 

マスゴミをみれば、畿内説と九州説が拮抗しているかのような錯覚を覚えるだろうが、畿内説というのはまこと、「あり得ない説」、空理空論なのだ!
その空理空論を大学で税金で食わしてもらってる連中が推し進めているのだ!
納税者よ、立ち上がれ! 万国の労働者を今こそ決起せよ!(笑)と言いたい。


併せて読みたい

 

考古学から見た邪馬台国大和説 畿内ではありえぬ邪馬台国  2020関川 尚功 (著) 梓書院

 

↑この人は、実際に纏向遺跡の発掘に携わった重要人物である。それで、結果を踏まえて邪馬台国畿内説はあり得ないと言ってる。
 関川氏の発言の機会が少なすぎる、冷遇されていると感じるのは私だけか?
 どす黒い、邪馬台国畿内説派の陰謀ではないか? 奴らならやりかねない、人殺し以外なんでもやるだろう。

 

日本人の祖先は縄文人だった! ―いま明かされる日本人ルーツの真実 2021/長浜 浩明 (著) 展転社