「28年目の読後感。これはホントにひどい…」 天皇家の大秘密政策―日本史転覆のシナリオ 大和朝廷の出自隠し1300年の密謀 (超知ライブラリー) 1995/大杉 博 (著) 徳間書店 679年、吉野宮の会盟以後の歴史はすべて天皇家の出自を隠すための捏造の歴史だ。天皇家の出自はなぜわからなかったのか。それは天皇家自身が隠してしまったからである。なぜ、隠したのか。古代ユダヤ人が埋めたという「モーセの契約の箱」は本当に、四国剣山に存在するのか。1300年の時を超えて、今、日本史に仕掛けられていた未曾有の大秘密政

面白い本が部屋を掃除したら出てきて、28年ぶりに、しばし読みふけってしまった。
あの時、確か、考古学好きの日本古代史好きの高校生であったかと思う。
本書で覚えているのは2点。
邪馬台国はもしかしたら四国にあったのかもな、ということが一つ。(私は当時から九州説だったが)
もう一つは、これだけの説得力ある論証になぜ、歴史家たちは答えないのか、という義憤のようなものを感じたことを記憶している。(あくまで当時の話です)
筆者は自身の邪馬台国四国説を、郵便で当時の歴史家たちに送りつけて反応を待ったとのことだった。

 

邪馬台国の結論は四国山上説だ―ドキュメント・邪馬台国論争 1993/大杉 博 (著)たま出版
これこれ、これも買ったはずで探せばどこかにあるはずだ。

 

ただ、28年ぶりに再読してみて、本書はただただ無残というほかない。
28年の知識量のアップがそういう評価を下したということ。

冒頭から95ページまで、隋書俀国伝(貞観二年(628)唐の時代の書物です)のいわゆる「秦王国」の解釈になるが、これがひどい。
こういうものです。訳はインターネットから拾いました。

 

「明くる年(大業四年、608)、お上(煬帝)は文林郎の裴世清を使者として倭国へ派遣した。百済へ渡り、竹島に至る。
南に耽羅国を望み、はるかな大海の中にあるツシマ国を経て、また東のイキ国へ至り、またチクシ国へ至る。
また東の秦王国に至る。その人は中国人と同じで、夷洲と考えるが、はっきりしたことはわからない。また十余国を経て海岸に到達する。
チクシ国以東はみな倭に付属している。」

 

この「秦王国」の場所を、著者・大杉氏は四国のどこかの山に比定する。
電話帳を調べて秦という名字が多い(今治市西条市新居浜市に多いらしい 笑)からという理由で四国の山にする。

併せて、志賀島の金印のことにも言及する。
駒沢大学の三木教授の「 漢委奴國王は、かんの・わの・なの・こくおう)」とは到底読めない。」という説を挙げ、これは「かんの・いと、もしくは いど、いぬ ・こくおう」と読むとする。
そこまではいい。私も賛成だ。しかし、それからがいけない。
でも、金印が出たのは九州、志賀島だ。これをどうみる。

 

「金印は、不浄のものとして九州の志賀島に止め置かれたのであって、けっして邪馬台国九州説を裏付けるものとはならない!」

 

はっはっはっ、ゲラゲラゲラ 大笑い!!

 

無知は怖い。
28年前の自分。
なぜ、あのとき、送りつけられた当時の歴史家たちが大杉博氏の郵便を無視したのか。
今ならはっきりわかる。
語るに値しないということ。その一点である。

 

日本にあった朝鮮王国―謎の「秦王国」と古代信仰 1993/大和 岩雄 (著)白水社
『隋書』倭国伝に載る「秦王国」の記事を手掛りに、古代の豊前を舞台とした新羅加耶系渡来人(秦氏)とその文化の実態に迫る。特に八幡信仰・修験道の成立と源流、弥勒信仰・虚空蔵信仰に関する論及は、本書の圧巻である。大仏造立と宇佐八幡の関係も、秦氏を軸として明快に説かれている。

このテーマも類書がたくさんある。九州在住の方が主に書かれているが、いずれもお国自慢で終わらない。
立派な論考になっている。

アマゾンレビューで気になるものがあった。

「極めつけはあとがきに書かれた秦王国の名の説明だ。朝鮮半島から来た人々が作った秦王国なのに、隋使の乗る船がその近くを通った時に、小野妹子らが「隋使の関心を惹くために」「あなたたちと同じ中国人が住む国(秦)ですよ」と言った、だから隋書に「秦王国」と書かれたのだ、と説明する。
秦王国が遠いところにあるのならまだしも、船から見えるところを通れば場合によっては随使から「直接行ってみたい」と言われる可能性もあり、すぐにばれる嘘ということになる。あまりに論の通らない妄想だ。」

 

後半が意味不明だが、前半には私が答えよう。
又東至秦王國。其人同於華夏、 『隋書』倭国
↑そこにいたのは、シナ人だった
九州東北部の神籠石のある地域だ。そこが邪馬台国だ。秦氏の根拠地…
卑弥呼以後、新羅文化の流入が大きくシナ人化したようだ。主に新羅からきたが、もともとは始皇帝賦役を嫌って新羅に逃れたというシナ人のコロニー。
裴世清、小野妹子からみればシナ人とみえておかしくない。
だから、彼らはシナ人と話すとき通訳要らなかったんだぜ。どうだ、驚いたか。