「肌色」の憂鬱 - 近代日本の人種体験 (中公叢書) 2014/眞嶋 亜有 (著)中央公論新社  読んだ感想…だから今こそ、「脱亜論」に還れと言いたい。

明治以降、「西洋化」を追求した日本は、自らの人種的差異をいかに捉えられてきたのか。タブー視されてきたその心性の系譜をたどる。


高尚な文体の序文から、何が始まるかと思えば夏目漱石157センチ、ラフカディオ・ハーン154センチ、小村寿太郎156センチ、児玉源太郎150センチ、……
体が小さいことで西洋人に引け目を感じるのはやむをないという論調がつづく。

 

夏目漱石の有名なイギリス留学中の一節、

「何となく自分が肩身の狭い心持がする。向こうから人間、並外れて低い奴が来た。しめたと思ってすれ違ってみると、自分より二寸ばかり高い。今度は向こうから妙な顔色をした一寸法師が来たなと思うと、これすなわち、おのれ自身の影が姿見に写ったのである。」


そういえばかなり昔、イギリスの夏目漱石なじみの場所に夏目漱石銅像を建てようという運動が在英日本人の間で盛り上がったが、イギリス人の反対で立ち消えになったということがあったことを思い出した。

 

イギリスから帰ってきて、まるで人が変わってしまった夏目漱石
ドメスティックバイオレンスも相当酷かったという家族の証言。

今から振り返れば、漱石は「精神的な病気」だったので?


内村鑑三(178センチ)もずいぶん苦労したんだなと気の毒になった。
10カ月だが、アメリカの病院に勤めて糞尿の始末までやっていたと。
人種的要素をまじえた彼のアメリカ留学譚はとにかく泣ける。

 

内村鑑三高橋是清三島弥太郎(後の日本銀行総裁)。
同時期、船でアメリカへ渡ってる3人に共通するのは、シナ人と一緒の下等船室に乗るしかなく、それだけはやめてくれと格闘したということらしい。
とにかくシナ人の下層民は臭いし無軌道で、かなわんということらしい。


同時期、アメリカへたった2年間行った有島武郎アメリカ各地で、モテモテで複数のアメリカ人女性からプロポーズされてたという事実から、白人の黄色人差別というのは「形態差別」であることがよくわかる。
有島武郎は誰が見ても端正な顔立ちだ。


遠藤周作(178センチ)も「おバカさん」とかのユーモア小説は面白かったが、純文学系の「白い人」、「黄色い人」には乗れなかったことを思い出した。

 

「俺は永遠に黄いろく、あの女は永遠に白い」

 

あまりにも、痛ましすぎてついていけなかったのだ。

何を好き好んでキリスト教徒に倭人がなって、人種差別のいちばん激しい時期にフランスに行かなきゃならんのだと、思っていたのだが、遠藤周作も両親が離婚したり複雑な背景があったと本書を読んで知った。

 


英米本位の平和主義を排す 作者:近衛文麿 大正七年 1918年
https://ja.wikisource.org/wiki/%E8%8B%B1%E7%B1%B3%E6%9C%AC%E4%BD%8D%E3%81%AE%E5%B9%B3%E5%92%8C%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%82%92%E6%8E%92%E3%81%99
次に特に日本人の立場よりして主張すべきは、黃白人の差別的待遇の撤廢なり。かの合衆國を初め英國殖民地たる濠洲、加奈陀等が白人に對して門戶を開放しながら、日本人初め一般黃人を劣等視して之を排斥しつゝあるは、今更事新らしく喋々する迄もなく、我國民の夙に憤慨しつゝある所なり。黃人と見れば凡ての職業に就くを妨害し、家屋耕地の貸付をなさゞるのみならず、甚しきはホテルに一夜の宿を求むるにも白人の保證人を要する所ありと言ふに至りては、人道上由々しき問題にして、假令黃人ならずとも、苟も正義の士の默視すべからざる所なり。卽ち吾人は來るべき媾和會議に於て英米人をして深く其前非を悔いて傲慢無禮の態度を改めしめ、黃人に對して設くる入國制限の撤廢は勿論、黃人に對する差別的待遇を規定せる一切の法令の改正を正義人道の上より主張せざる可からず。

 

↑近衛がこれを書いたとき、まだ20代だったのかというところに驚いた。日本が人種差別撤廃を訴えたパリ講和会議随行してるとのこと。
 長い船旅の間にも様々な人種差別をまじかで見て憤ったのだろう。

さすがに日本のプリンスが書いたこの文章は、白人国家の新聞にも取り上げられたという。


駐米イギリス公使ロナルド・キャンベル(Ronald Hugh Campbell)との私的な会話では、ルーズベルト大統領は、スミソニアン博物館の研究者であるアレス・ハードリチカによる、日本人の頭蓋骨は「われわれのより約2000年、発達が遅れている」という見解を紹介した上で、「人種間の差異を重視し、人種交配によって文明が進歩する」などと語り、「インド系やユーラシア系とアジア人種、欧州人とアジア人種を交配させるべきだ。だが日本人は除外する」、「日本人が敗北した後は、他の人種との結婚をあらゆる手段を用いて奨励すべきである」などとキャンベルに語ったという。

 

アメリカ白人はリーダー自らがこんなだから、まこと呆れる…
 こういう狂人を相手に「日米交渉」とかやってた、近衛内閣の人たちの努力には頭が下がる。


昭和天皇マッカーサーが並んでる有名な写真を持ってきて、私も再三、貼っている、

 

昭和天皇は戦後の回想(昭和天皇独白録)の中で戦争の遠因として以下のように述べています。

 

「この原因を尋ねれば、遠く第一次世界大戦後の平和条約の内容に伏在している。
日本の主張した人種平等案は列国の容認する処とならず、黄白の差別感は依然残存し加州(カリフォルニア)移民拒否の如きは日本国民を憤慨させるに十分なものである。又青島還付を強いられたこと亦然りである。
かかる国民的憤慨を背景として一度、軍が立ち上がった時に、之を抑へることは容易な業ではない」


本書はじつに面白い。

著者は「セオリー通り」、日本人は開国以来、白人種から徹底的に差別されてきたが、ちょうせんじんとシナ人を差別しているから云々と2,3か所で書いている。

かれらが、差別されて当然のミンジョクであるとはもちろん言っていないし、そんなこと書けないだろう。

 

tennkataihei.hatenablog.com

 

だが、インバウンドの興隆、外国人観光客が急に増えて、さいきん日本を絶賛する白人が増えている。
ようつべでそんな動画ばかり見ている私だが(笑)、今こそ、福沢諭吉先生「脱亜論」に還れ、と強く言いたい。

 

ここはひとつ、クリントイーストウッド、ジョンウェインと同じ身長193センチの、我が大谷翔平選手に頑張ってもらおうではありませんか。


調べてみると、著者はこれ1冊しか書いていないようだ。
非常に惜しいことだ。
次回作を待とう。